「選択の自由」
あなたは、普段お使いのシャンプーやトリートメントってどこで買いますか?
近所のドラックストア? スーパー? それともネットで? 「いつも行ってる美容院で買います」と言う選択肢もありますよね。
僕は、この答えに特に正解があるとは思ってはいません。
何処で買ったにしても、あなたが気に入って使っていて、香りも良く洗い上がりや仕上がりにも満足していてお値段も納得出来ているのなら全く問題は無いし、むしろそこまで納得出来るシャンプーに出逢えたあなたは幸運だと思います。
例えどこで何を買ったとしても、自分で納得出来る商品と出逢えると、きっと誰でも嬉しいですよね!
そう、どこで何を選ぶにしてもそれはあなたの自由なんです。
美容院と店販について
美容院ってどこのお店でもシャンプーっておいてありますよね。
シャンプー以外にもトリートメント、ワックスやスプレーなどのスタイリング剤や化粧品だけにとどまらず、様々な商品(美容関係者は店頭販売=店販(テンパン)と呼びます)が置いてあります。
今回はこの「店販」についてのお話です。
僕達美容師の仕事と言うのは、きっと美容院を利用されるお客様が思っているよりも「素材」(髪の毛の状態)に左右されます。
その「素材」をベースにヘアスタイルを作って行く訳ですが、「素材」がどの様な状態でもベストなヘアスタイルを作り上げるのが僕達美容師の仕事です。
ですが、「素材」の状態が良い状態であればあるほどヘアスタイルの再現性(ご家庭でシャンプーしても美容院で仕上げた時に限りなく近い状態)が高くなり、逆に「素材」の状態があまり良くない(ダメージヘア)状態だと再現性は低くなってしまいます。
結果的に『素材が良くなる=お手入れが簡単』となる訳です。
そのお客様自身の「素材」をベストな状態に近づける為の商品が美容院には置いてあります。
美容院サイドは「少しでもお客様の髪の毛の状態が良くなる為に」と美容ディーラー(材料屋さん)や、至る所から情報を集め、色々な商品をテストしてみたりしてお客様にとって最善な商品をチョイスして店頭に並べています。
ですので、もしあなたが今の髪の毛のコンディションに何かしらの不安や不満があるのでしたら担当の美容師に相談してみるのも一つの手だと思います。
でも、ドラックストアとかで良さそうなのを探して、そこで買うと言うのも別に有りだと思います。 そこが選択の自由です。
「選択の自由」があるはずなのに…
当店に初めてご来店されるお客様の中に、ちょくちょくいらっしゃるパターンで
「前に行ってた美容院は行く度に色々勧められて買わされるから凄く嫌だったの」
と言われる事があります。
さすがに初めてのご来店でこんな会話になる訳ではなく、大体3回目か4回目のご来店時にお客様の方から言われます。 で、その後に続くのが
「ここは全然商品を勧めて来ないわね(笑)」
はい。すいません。当店では商品をお客様に対して積極的なアプローチって『ほぼ』しないんです。別に仕事をサボっている訳では無く、それが当店の方針なんです。
あなたがもし、今から美容院にヘアカラーとカットに行くとして「今から行く美容院で今日はどんな商品買おうかなぁ?」って考えながら行きますか?
この質問に【はい】と答える人と【いいえ】と答える人、一体どちらが多いのでしょうか? 個人的にこの質問への解答は【いいえ】と答えた方が多分多いのでは、と感じています。
ちなみにこの質問に対して、どちらが正しいとかは全く関係ありません。
ただ【いいえ】と答えた方に聞いてみたいのですが、もし行った先の美容院で
「このシャンプー新しく出たんですけど、すっごく良いシャンプーなんですよ!使ってみませんか?」
と最初にシャンプーしてくれるアシスタントに言われ
カットしてくれるスタイリストに言われ
ヘアカラーを塗布してくれる別のアシスタントにも言われ
最後の仕上げにまたスタイリストに言われ
トドメにお会計をしてくれたスタッフにも
「新しいシャンプーいかがですか?」
ちょっと極端なケースですが、この様に美容院で声をかけられた事がありますか? その時どんな気分でした?
そこに選択の自由はあるのでしょうか?
あ。もし美容師さんがこのブログを見てたなら気をつけた方がいいですよ。
あなたの店販アプローチ、もしかして押売りになっていませんか?
そのお客様が、本当に喜んでお買い求めになっているのなら、それは素晴らしい事ですが、最後の選択は、お客様自身の意志で決められる「猶予」と言うか断り易い「隙」みたいなモノをこちらで作ってあげてもいいんじゃないかと。
美容院経営サイドの考え方
これも一概には言えませんが、僕達の業界に「技術売上に対する店販比率」というものがあります。
簡単に言うと、技術売上(カットやヘアカラーやパーマ等技術に対しての売上)が「¥10000」で店販が「¥1000」売れたから店販比率は10%だね。みたいな感じで業界内では技術売上に対する店販比率は「**%」が理想的との考え方があったりもします。
ですので美容院によっては話題になりそうな商品に対してキャンペーンを打って沢山その商品を頑張って売ろうとしたりします。
そのキャンペーンと言うのがちょっとクセもので、お客様に対してオープンなキャンペーンとクローズドのキャンペーンがあったりします。
オープンなキャンペーンとは名前の通り、「今月はこれがオススメです!」とか「今これを買うと※※※が付いてきます」みたいなパターンです。
これについては、あなた自身がその商品に興味があったり、お得感があるならば購入しても良いと思います。
ただし、興味や関心が持てないようならば、出来るだけキッチリ断る様にした方が良いでしょう。
もう一つのクローズドなキャンペーンとは、商品を「コレだ!」と絞ったものに限りませんが、「店販強化月間」みたいにザックリと店販比率を上げましょう的なキャンペーンで、もちろんお客様に対しては告知無しで行われたりします。
中には複数店舗のある美容院だと、その店舗毎に店販売上を競わせたり、スタイリストからアシスタントまで個人毎に競わせたりするところもあります。
でも、僕は別にこれらを批判してる訳ではありません。この様なキャンペーンで商品が沢山売れて、沢山のお客様がそれによって髪の毛のコンディションも良くなり、毎日のお手入れも簡単になり、お客様も大喜びならこれ以上の素晴らしい事はありません。
商品を買ったあなたもハッピーで、売った美容師もハッピーで、お互いが「win-win」の関係なんて、お客様と美容師の理想的な関係だと思います。
美容師の本分とは
ただ、本当にその商品を購入された全てのお客様が心から喜んでいらっしゃるのでしょうか?
一番売りたい人(経営サイド)には商品を買って下さるお客様一人ひとりの顔が見えているのでしょうか?
本当にその商品が「使ってみたい」と思っているお客様だけが買って下さっているのでしょうか?
欲しくもないお客様に「無理やり売りつけられた」と感じられる事は無かったのでしょうか?
その一番売りたい人から「店販比率を上げろ!」と指示を出され、美容師が「とにかく何か商品を売らなければ」なんて考えながら仕事してる美容師よりも「今日はどんな感じで目の前のお客さんを可愛く(カッコよく)しようかな?」って考えて仕事をしている美容師さんに僕なら担当してもらいたいです。
美容師法でも言ってる通り、
美容師法
第二条 この法律で「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
となっている事から『美容師』とは「容姿を美しくすること」を生業にする者だと僕は思っているので、モノを売る事がメインになってしまう様な『美容師』とは一体何者なんだろう…と思ってみたりします。
当店での店販についての考え方
当店での商品の販売については先ほど少し触れた様に、こちらからお客様に積極的に勧める事は、ほとんど有りません。
あまりの勧めなさに、まだ来店回数の少ないお客様からは
「ここに置いてある商品って譲って貰えるの?」と聞かれたりする事もあります。
これは別に、「お客様の髪の毛のコンディションなんてどうでも良い」などと思っている訳ではありません。他の美容院と比べると明らかに置いてある商品も少ないとは思いますが、一応色々な商品を比較検討し、「これがベスト」と思える商品を取り揃えてあります。
ただ、僕は美容師であってモノ売りでは無いと思っているので、先ずお客様に提供するのは技術です。その技術で信頼すら勝ち取れていない状況の新しいお客様に「新しく出たシャンプー凄くいいんですよ!」なんてとてもおこがましくて言えません。
ですから当店で商品を販売する時は、そこにお客様の「使ってみたい」と感じる意思があるかどうかで決まります。
意思のあるお客様はヘアケアやスタイリングについてのアドバイスをこちらがする時でも積極的に質問して来られますし、そんなお客様には商品の説明もしっかりと行います。でも最終的に商品を購入されるのは、そのお客様の意志にお任せします。
それ以外にもお客様から「こんな商品欲しいんだけど」と相談される事もありますが、当店で取り扱っていない商品でも全力でお客様のニーズに合う商品を探して仕入れる事もあります。
何故ならば、どんな些細な事でもお客様から相談されると美容師としては嬉しいし、お客様に対してその時に出来る最大限の結果を出す事が美容師としての当たり前だと思っているからです。
簡単に言ってしまえば当店での商品のあり方は
「欲しいと思う人には買って頂き、欲しくない人には勧めない」
という方針です。もの凄くシンプルです。
あなたは断れる?断れない?
最初から最後まで個人的な主観で書いてますが、結論から言うと別に美容師に勧められたからって欲しくも無いのに無理に買う必要なんてありませんよ!
欲しいと思うなら買えば良いと思いますが、欲しく無いのならちゃんと断りましょう。
ついつい勧められるがままに買ってしまうと、売る方もクセになって毎回毎回何かしら買わせられてしまう様になってしまうかも知れないので、はっきりと断りましょう。
ここで「いつも担当して貰ってる美容師さんなら普通に断れる」と言うあなたは良い美容師さんにめぐり逢えていると思います。商品の事だけに限らず、色んなコミュニケーションがしっかり取れていて美容師さんともきっと良い関係なのでしょう。
逆に、もし「なんだか美容師さんに悪い気がして断れない」と余計な気を使ってしまう様な方は、大きな勘違いをしています。
美容師という仕事は技術的な色合いが少し強めではありますが、基本的にはサービス業なので気を使わなければならないのは美容師の方で、お客様であるあなたが気を使う必要なんて無いんですよ!
もし、それでも欲しく無いのに気を使ってしまって断れないと言う方は、いっそのこと美容院を変えてしまっても良いのかも知れません。
きっと何処かに、あなたが気を使う事なく何でも言える美容師がきっといると思うし、商品だけでなくヘアスタイルにしても、きっとその方が理想により近づく事が出来ると思いますよ。
それと、当店をご利用頂いているお客様には、あまり詳しく今回みたいな内容の説明はした事がありませんが、当店特有の「空気感」できっと伝わっていたと思っています。
でも、「もっと色々教えて欲しい」とか「こんな商品あるの?」等聞きたい事とかある様でしたら、いつでも遠慮なく言って下さいね!
それでは、良いヘアケアライフを♪( ´ ▽ ` )ノシ
追記2017/5/15
この記事の反応についての投稿です。お時間ある方はのぞいてみて下さい。
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